奇跡事【完結】
マークおじさんが僕に笑顔を向けている。
それに、優しい、村の人々。
……あれ。あの、優しい笑顔のおばちゃんって名前なんだっけ?
マークおじさん以外の名前が浮かばない。出てこない。
どうして?
―――――――――それはね、ルーイ。
一瞬にして、優しくて暖かい空気が消え去って闇に包まれる。
聞こえるのはいつもの、声。
酷く冷たくて、落ち着いた声。
―――――――――マーク以外、誰もいなかったからよ。
意味がわからない。
マークおじさん以外、いなかったって。
確かに、あそこは火の海で。
おびただしい量の血液が流れていたんだ。
むせ返るような、血の臭い。
それを忘れたりなんかしない。
――――――――――人を信じると、バカをみるのは自分。
頭にはその声がガンガンと響く。
僕は信じている。
マークおじさんの事も、サーシャの事も、キョウの事も。
――――――――――騙して、裏切る生き物なのよ?ねえ、ルーイ。