奇跡事【完結】
その森を抜けたら、違う街があるらしいんだけどね。
僕は出るつもりは更々ない。
一度、キョウと出ようとして結局森の中で迷子になった事あって、そん時もサーシャにこっぴどく叱られたな。
遠い記憶だけど。
いつもの場所。
小さな湖があって、そこだけ少し開けてるから薄暗い森に日の光が差しこんで。
とっても、幻想的で綺麗なんだ。
透き通る水に差し込む光。
それに照らされる魚達。
静かで、涼しくて。
動物の鳴き声や、風の音とか。
とにかく、ここにいると落ち着くんだ。
僕は腰を下ろすと、その綺麗な景色を眺めた。
澄んでるな。
本当に。
ごろんっと寝転がって、空を見上げる。
真っ青な空に、わたあめみたいな雲が散らばっていた。
気持ちいい。
陽の暖かさが、心地よい睡魔を誘って来る。
段々と落ちて来る瞼。
抗う事は出来ずに、ゆっくりと瞼を閉じて僕は意識を手放した。