奇跡事【完結】
「サーシャ!?」
「おい!サーシャをどこにやった!!」
僕とキョウがエレノアに詰め寄る。
それでも、エレノアの表情は一切変わらない。
「安心して頂戴。外に出しただけよ。今頃、パチフィスタが看てるわ」
「本当だろうな」
「ええ。本当よ、キョウ。それに、貴方達二人と話ししたかったら邪魔者は消えてもらったの」
「……話?」
「ねえ、魔力を解放して欲しくない?」
「っ!」
その言葉に僕とキョウは息を呑んで、エレノアを見つめる。
魔力を解放?
僕達の、って事?
「今のままじゃ、サーティスは倒せないわ」
サーティスの名前が出た途端、キョウがぐっと拳を作った。
その横顔は悔しそうで、とても険しい。
思い出しているのだろう、あの日の事を。
「悔しかったでしょう?何も出来なかった自分自身に腹が立ったでしょう?
無力ね。そう、無力なのよ。マークに魔力を抑え込まれたままだったら」
妖艶なその紅い唇が弧を描く。
ゆるゆると真っ白い頬が持ち上がった。