夏とおじさんとアイスクリーム
対処とその後
あの夏の悪夢から半年が経ったが相変わらず僕の右手の小指からは、アイスクリームが出ていた。
あの日は、キイチを家まで送ると僕は、急に仕事が入ったと嘘をつき何とか逃げた。
キイチには、何度も秘密だからと念を押した。
キイチはその度に分かってるよと繰り返し答えた。
僕が少しだけラッキーだったのは、仕事が雑文書きだったからだ。
主に映画評や小説評音楽評を書くのが仕事だった。
もちろんゴーストライターやかなり適当なゴシップ記事も書いたし、時には、官能小説も書いた。
独身だったし贅沢さえしなければ飯は食べて行けた。
人にあまり会わずに済んだしこれがサラリーマンだったら大変な事だったと思った。
僕は、机に座りパソコンやノート資料などに囲まれて過ごしていた。
ただあの悪夢から机の下に必ずバケツを置くようになった。
確かにアイスクリームは、美味しかったがいつも指をしゃぶってたら糖尿病にでもなりかねなかったから机の下のバケツにいつも右手をぶら下げていた。
僕は、右利きだったが徐々に左で書き物やパソコンのキーを打つ練習をして行った。
今では、左でかなりの事がやれるようになっていた。
バケツに貯まるアイスクリームは、一時間に一回は、トイレに流した。
起きている時には、それで良かったが寝る時には、大きなゴミ箱ようのポリバケツを買って来て右手をそこに置いて寝た。
最初のうちは、ポリバケツを倒してしまってアイスクリームをぶちまけたりうたた寝をしてベッドがアイスクリームでベタベタになったりした。