こわれもの


アスカがバイトを終える頃。

昼間のあたたかさがウソだったかのように、外はめっきり冷えていた。


先に仕事を終えていたヒロトは、アスカに会うため、彼女の働くコンビニまで車を走らせた。

ドライブついでに、彼女を家まで送る予定でいる。


「ヒロちゃん、おつかれさま!」

「アスカも、おつかれ」

アスカを助手席に乗せると、ヒロトは少し遠回りな運転をして彼女の自宅を目指した。

「この道、初めて通ったよ~!」

アスカは言い、窓の外に視線を巡らせる。

見慣れたはずの景色の中にも、知らない道がまだまだあったのだと気付く。

ヒロトとドライブが出来て、ただただ幸せ。

会話もいらないくらい、アスカは穏やかな心地になっていた。


アスカの自宅近くの緑地公園に車を止めると、ヒロトはためらいがちに話を切り出した。

「アスカ……。話があるんだけど、驚かずに聞いてくれる?」

「なに?」

アスカの顔は、やや強張った。

改まったヒロトの表情は、アスカの動揺を誘うのに充分過ぎる。

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