こわれもの
二人が乗る車のフロントからは、緑地公園内に広がる芝生の丘が見渡せた。
すっかり暗くなった風景を見るともなしに見て、アスカは身を縮こめる。
エンジンを切り、エアコンだけを付けた車内。
静かな空気音だけが響く中、
「付き合おっか、俺達」
ヒロトの低くて柔らかい声は、よく通った。
「え?」
何を言われたのか分からず、アスカは運転席にいるヒロトを凝視した。
彼の横顔はいたって真剣だ。
ヒロトと目が合い、アスカはフリーズしてしまう。
深くて切れ長な目が、アスカの動きを、からめとる。
「でも、ヒロちゃんは、私のこと妹として見てるんじゃなかった?」
「言ったっけ、そんなこと」
ヒロトは冗談めかして言う。
「可愛いなって思ってた。
友達になる前からさ」
「じゃあ訊くけど、ヒロちゃんはどんな人がタイプ?
私とは全然違うんじゃない?」
ヒロトに告白されたのはとても嬉しいし願ってもない状況だが、今までの停滞感を思うとにわかには信じられず、アスカは質問をせずにはいられなかった。
「ヒロちゃん、年下になんか、興味ないでしょ?」