こわれもの
「好きになったヤツが、好みだから」
ヒロトは言い、左手でアスカの右手を優しくにぎる。
「ヒロちゃん……!」
激しい鼓動。
鼓膜が破れそうなくらい、アスカの心音は彼女の全身を揺さぶった。
「アスカは、俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃないよっ!」
“むしろ、ずっと好きだった……”
「でも、私、ヒロちゃんのことよく知らないし……。
好きって言ってもらえて嬉しいけど、いきなり過ぎて、信じられないっていうか……」
「これから、ゆっくり知ってもらうからいいよ」
「ヒロちゃん、正気?」
アスカはなぜだか、ヒロトの気持ちを疑っていた。
こうなることに不自然さを覚えていたと言ってもいい。
“ヒロちゃん、本当に私を好きなの?
告白するなら、絶対私の方からだって思ってたのに……”
しかし、これは現実。
車内での時間が長くなれば長くなるほど、ヒロトの告白は本当に起きた出来事なのだと、アスカは雰囲気で感じ取った。
■親密の揺らめき 終■