こわれもの

ヒロトは、決して自分のことを良く言わない。

それどころか、自分の評価を下げるかのごとく、自分はいい加減な性格だと言い張る。

仕事については特にそうだ。

「俺、バイトでめげてたアスカに偉そうなこと言ったけど、そんなこと言えるヤツじゃないんだよな~」

しかし、アスカは知っている。

ヒロトがいかに、職場で頼りにされているのかを。


春休みを目前にしたあの日。

ヒロトに告白されたアスカは、戸惑いつつも彼と付き合うことにしたのだった。


それからじょじょに、彼の身の周りのことを知っていった。

職場の同僚と仲良くしていることや、仕事が出来る人間だということ。

アスカがそんな彼を尊敬し褒めるようになるまで、そう多くの時間はかからなかった。

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