こわれもの
ヒロトと付き合うようになり、アスカの考え方にも変化があった。
高校3年に進級した影響も大きなものだったが、ヒロトと一緒にいることが、生きがいみたいになっている。
「私、卒業したらヒロちゃんと同じ店で働こっかな。
楽しそうだし」
バイト経験しかないアスカにとって、ヒロトが語るゲームセンターでの仕事はものすごく楽しそうにみえ、興味を引かれた。
店員はたまに、ストラップやぬいぐるみといった景品のサンプルをもらえたりするし、彼の話を聞いている限り、仕事内容はコンビニ業務より楽そうである。
卒業後の進路もよく考えていないアスカは、自然と、ヒロトと歩む道を心に描いていた。
けれど、ヒロトは決まって、
「アスカはアスカのやりたいことをやらないと、後悔する。
だから、俺のとこに来るのは禁止」
と、柔らかい口調ながらも、アスカの思いを否定した。
アスカにとってそれはけっこう寂しいことだったが、ヒロトの助言や注意に間違いはない。
そう信じていたので、自分なりに、進むべき未来を考えたりしていた。
なかなか、コレといった進路希望が浮かばなかったけれど、ヒロトと一緒にいられれば充分楽しいので、今のアスカは、それでいいと思っている。