こわれもの
付き合ってみて初めて知ったことだが、ヒロトはアパートで一人暮らしをしている。
それも、アスカがヒロトと歩む未来を想像するのに充分過ぎる設定だった。
花見を満喫した帰り、アスカは初めて、ヒロトのアパートに足を踏み入れることとなった。
「一人暮らしかぁ、いいなぁ」
玄関をくぐるなり、アスカはテンション高めに言った。
未知の世界である。
たまに、テスト勉強も兼ねて、クラスメイトやキョウの家に遊びに行くことはあるが、皆家族と住んでいる。
ヒロトにとっては慣れすぎた一人暮らしでも、アスカにとってはかなり珍しいものだった。
「前に、ヒロちゃんの同僚も、ここに来たんだよね。
だから、私も一回来てみたいと思ってたんだ。
じゃなきゃ、なんか悔しいし」
言うなりアスカは、リビングのソファーに座り、ヒロトを見た。
「楽しそうだな」
ヒロトが笑うと、アスカもつられるように満面の笑みを浮かべる。
「だって、ヒロちゃんと一緒なんだもん!」