こわれもの

素直過ぎるアスカに、さすがのヒロトも照れるしかなかった。

「よく、照れもせずそういうこと言えるな、アスカは」

「だって、本当のことだしっ」

言うなりアスカは、隣に座ったヒロトに抱き着いた。

こうして甘えると、ヒロトは必ず受け止めてくれる。

「子供みたいだな、ほんとに」

ヒロトはアスカの頭をなでた。

初めてヒロトの部屋に入ったゆえの興奮も手伝って、アスカの心は、こうすることでさらに満たされた。


アスカはヒロトと付き合うようになってから、再婚した母親とのギクシャクした関係が、あまり気にならなくなったのである。


その夜、ヒロトの家で夕食を取るべく出前のピザを注文した。

二人は、どちらかともなくそれを口にする。

アスカは、久しぶりに家族の話をした。

「私、ヒロちゃんといると、お母さんのこと忘れられる」

「お前、寂しがり屋だもんな」

「うん。おばあちゃんは優しいけど、やっぱり、お母さんと過ごせないのは寂しくもあったから……」

ピザを食べつつ、ヒロトはアスカの話に耳を傾けていた。

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