こわれもの
12月は日が落ちるのが早く、午後になればなおさら寒くなる。
辺りが暗くなってきた。
アスカは同じ場所でヒロトを待ち続けたが、18時を過ぎても、彼はとうとう来なかった。
何度かメールをしてみたが、返信がない。
怒りや悲しみ以前に、ヒロトとはもう終わりなのだろうか、と、別れの気配すら感じた。
“やっぱり、来なかった……。
ヒロちゃん、何で……?”
こぼれそうになる涙を寸前で抑え、アスカは周囲を見渡した。
今朝見たカップルが、夜景をバックに、手をつないで仲よさ気に帰っていく。
“あの人達、私とヒロちゃんとは大違いだ……”
弱気な胸を蝕(むしば)む真っ青な不安。
どうしようもないほど深すぎる孤独が、アスカを包む。
気が狂いそうだった。
ヒロトの身に何かあったのだろうか?という類の心配は、とっくに通り過ぎている。
ここまでくるともう、ヒロトが遅刻したのはアスカにとって都合の悪いことがあるからだとしか思えなかった。