こわれもの

朝この駅を利用した者は、たいてい帰りも同じ駅を利用する。

この8時間の間に、ロータリー付近のベンチに座るアスカの体は芯まで冷え切っていたが、見覚えのあるカップルや家族連れを見ると、頬を中心に嫌な熱がたまっていった。

それは、同じクラスのマツリと再会した時も同じだった。

「まだ、いたのかよ?」

昼間バッタリ会ったマツリと、夜も出くわしてしまったのである。

「……マツリ、友達と遊びに行ったんじゃないの?」

まだここにアスカがいることに動揺しながらも、マツリはそれを隠し、彼女の質問に答える。

「まあ、ゲームやるだけだったし、さすがにもう夕飯のためにみんな家帰ろうってなって、解散した」

マツリは、誰かの家で友達数人と流行りのゲームをしていたそうだ。

「そっか。だよね。

さすがに、もうすぐ夜だもんね」

アスカは、真っ暗に染まる18時の空を見上げた。

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