こわれもの
アスカは悩んだ。
このままここで、ヒロトを待ち続けるべきか。
それとも、ヒロトのアパートまで足を運び、マツリのアドバイス通り、ヒロトに想いをぶつけるべきか……。
どちらを選んでも、悲しい未来が待っていそうな気がする。
なぜそう考えてしまうのかは分からないけれど……。
今日、何度目になるのか分からないケータイ操作をし、ヒロトの番号を表示した。
突然訪ねたら引かれそうな気がするので、アパートに行く前に電話をかけることに。
それで出てくれなかったら、メールをしてからアパートに行こう……!
爆発しそうな心音を抱え、アスカはヒロトに電話をかけた。
やけに大きく響く呼び出し音が不安をあおる。
緊張の甲斐もなく、ヒロトは電話に出なかった。
《今日、急用か何かあった?
今までずっと待ってたんだけど、さすがに心配だよ。
今からアパートに行くね》
そう入力し、ヒロトにメールを送った。
実際の量より重たく感じるトートバッグを片手に、アスカはヒロトのアパートに向かった。
その足取りには、今朝駅に向かった時の軽やかさはない。
■疑心、幸福、予兆 終■