こわれもの
12月になり、ますます風が冷たくなった。
高二の冬。
学校帰りの夕方。
上原アスカ(うえはら·あすか)は、制服姿で、枯れ葉が舞う街道を急ぎ足で通り過ぎた。
縮こまる体にムチうつような寒さ。
いつもなら、同じクラスの友人達と寄り道して帰るのだが、今日のアスカは、一刻も早く行かなければならない所がある。
今日から、自宅近くのコンビニでバイトすることが決まっているのだ。
本日は、バイト初出勤の日。
学校帰りだからといって遅刻するわけにはいかない。
部活をしているのならともかく、アスカは帰宅部だ。
万が一バイトに遅れても、何の言い訳もできない。
二週間前。
アスカは、半年付き合っていた他校の彼氏と別れた。
元々、依存的な性格のアスカは、“恋愛中の自分”を失った結果、抜け殻のようになり、日常の価値すら色あせるように感じていた。
“このままではいけない!”
心機一転、バイトを始めることにした。
衣更えの季節ごとに欲しい服が見つかるから、小遣い稼ぎとしてもちょうどいい。