こわれもの
外から見ているのと違い、コンビニでのバイトは想像以上に大変だった。
レジ打ち、商品補充、接客、そうじ。
やることはたくさんある。
自宅近くの見知ったコンビニだというのに、店員の制服を身につけただけで、アスカにとっては未知の場所と化した。
不器用なアスカは、三日も働いていられないのでは、と、不安になったが、ある客と出会ったおかげで、バイトを続ける気になったのだった。
バイトを始めて一週間が経ち、ある程度のことは分かっているつもりだったが、アスカは致命的なミスをしてしまった。
「あなた、新人?
この前も間違えてたわよ」
「すみませんっ」
「次は気をつけてね」
おつりの額を間違え、常連の中年女性から注意されてしまったのである。
“接客中って、妙に焦るんだよね”
アスカは心の中で言い訳をした。
“お客さんのこと待たせちゃいけないって思うと、どうしても落ち着いて接客できないというか”
せかせかした手つきになり、お釣りを間違えてしまう。
“こんなんじゃ、すぐにやめさせられちゃうかもね”
どこか他人事のように思いながら、仕事をこなした。
ヘコんでいるヒマなどない。
アスカの気分など関係なしに、客は次々とやってくる。