こわれもの

「やっぱり。

動きがぎこちないと思った」

ヒロトは言い、にこやかに笑った。

来店時のクールな雰囲気や顔つきに似合わず、彼の笑顔は柔らかい。

切れ長な目に、薄い唇。

細い体で、長身。

歳は10代後半くらいだろうか?

アスカと同年代にも見える。

アスカがジッと彼を観察していると、何を勘違いしたのか、

「この服、変?」

ヒロトはキョトンとした顔で言った。

「いえっ、そんなことないですよっ」

誤解されたくないので、アスカはわけもわからないまま彼の不安を否定した。

ヒロトは、自分の着ている黒いカッターシャツを指先でつまみ、

「そこのゲーセンで働いてるんだ。

にしても、ピンクのネクタイって趣味悪いよな」

と、自分の服装をなじった。

この店から少し歩いた先の国道沿いに、大型のゲームセンターがある。

ヒロトは、そこの社員として働いていると話した。

ピンクのネクタイはともかく、オシャレにセットされた夜を連想させる彼の黒い髪は、その制服とよく合っている。

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