こわれもの
当時、バイトとして働くヒロトにとって、マキは仲良くしている派遣社員のうちの一人でしかなかったが……。
偶然にも、二人は休憩時間がかぶることが多く、そんな中マキは、無意識に発せられるヒロトの優しさに甘え、一人で子供を育てることの不安や悩み事、グチを彼に話していた。
マキは次第に、聞き上手なヒロトを好きになっていった。
告白したのも、マキだった。
離婚し、物心つく前の子供を育てている女性と付き合うということに、若すぎるヒロトはためらいを覚えたが、マキから熱烈なアプローチを受けるうちに、じょじょに男として自信を持つようになり、こう思えるようになった。
きっとマキとは、出会うべくして出会ったのだ。
どんな困難があっても、自分に出来る全てのことで、彼女と、彼女の子供を支えていきたい、と……。
二人の交際は順調に進んでいた。
マキの子供も早い段階でヒロトになついていたし、二人の間には大きなトラブルもなかった。
“いつか俺が、マキを幸せにしてみせる”
ヒロトは次第に、マキとの結婚を考えるようになった。
しかし、付き合って2年が経った頃、マキはヒロトの元を去っていった。