こわれもの

マキは、ヒロトにただひとつ、不満を持っていた。

20歳になっても定職に就かないヒロトとの未来に、不安を覚えたのだ。


ヒロトは、高校を卒業して以来、大学や専門学校には進まずフリーターになった。

探せば正社員の仕事があるとは思ったが、もう少し気楽なバイト生活をしていたいと、つい、楽な方に流されてしまった。


ヒロトに対し、それ以外の不満がなかったマキは、「フリーターをやめろ」などとは言わず、

「本気で私との結婚を考えてくれてるのなら、いつか自分の意思で変わってほしい」

と、ヒロトを見守っていた。

だが、交際2年目を過ぎても、ヒロトは一向にバイト生活を辞める気配がない。

マキはヒロトに見切りをつけ、定職のある男性を別に求めて孤独からの逃げ道を作った後、ヒロトに別れを告げたのだった。

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