こわれもの
“だいたい、いまさら話すこともないだろ……”
ヒロトはケータイをポケットにしまった。
もうマキと関わらなくても平気になりたくて、彼女の連絡先を消したのだ。
今になって、返信する義理もない。
また関わったところで、互いに嫌な思いをし、気まずさを味わうだけ……。
“帰り、アスカのコンビニ寄ろっと”
仕事の終わる19時まで、とうとうアスカからのメールは来なかった。
相手にメール返信を強要する気など全くないが、あんなに愛想の良いアスカがなぜメールを返してこないのか、気になってしまう。
それだけでなく、ヒロトは今、むしょうにアスカの顔を見たかった。
仕事を終えると、気持ちを切り替えるべく、ヒロトは夜の空に駆け出したのだった。
■迷いと不安、白い冬 終■