こわれもの
街並みを薄いオレンジに染める太陽の光が、店の窓ガラスを反射している。
アスカは、夕方のコンビニバイトに勤めていた。
“結局、ヒロトさんにメール返せなかったな……”
休憩室に置いてきたカバンの中のケータイを意識しつつ、レジでの接客をこなしていく。
今日一日、不本意にもマツリの鋭い指摘が気になり、心ここにあらずのアスカであった。
あんなに嫌になりかけていたバイトだが、今はモヤモヤした気分を紛らわすのにちょうどいい。
余計なことを考えないよう仕事に集中しているからか、時間が過ぎるのを早く感じたし、いつもよりミスも少なかった。
「だいぶ慣れたんじゃない?」
様子見に来た店長にそう褒められても、アスカはあまり嬉しくなかった。
ヒロトとの関係をどうしたらいいのか……。
それを考えるだけで、アスカの胸は苦々しいモヤに包まれる。