こわれもの

「難しい顔して、どしたの?」

「……!!」

ヒマになったことで、ついうっかり考え込んでいたらしい。


アスカは、来店したヒロトの呼びかけで、ようやく目の前のことを把握できるようになった。


「何回呼んでも返事ないし、びびった。

目開けながら寝るって、すげーな。

そんなこと出来るの、マンガのキャラだけかと思った」

彼にからかわれ、アスカは顔を真っ赤にした。

一人でぼんやりしていた所を見られた気恥ずかしさだけでなく、ヒロトの顔を見た瞬間、反射的に全神経が高ぶってしまったのだ。

「顔赤いけど、大丈夫?

熱あるんじゃない?」

ヒロトの手のひらが、アスカのおでこに触れる。

「そっ、そんなことないよっ」

緊張のあまり、アスカは身をこわばらせる。

そう答えるので精一杯だった。

「うん、熱はないみたいだな。よかった……」

ヒロトの手が離れていくことにホッとしながらも、アスカは少し残念な気がした。

もう少し、ヒロトに触れていてほしかった。

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