こわれもの
「ヒロトさん、彼女いないって!
何とか聞き出せた!」
バイトから帰るなり自室に駆け込んだアスカは、祖母に聞かれないようしっかり扉を閉め、キョウに電話をかけた。
さっそく仕入れた情報を、喜び満点に報告中である。
『よかったじゃん!』
「でね、日曜、ヒロトさんと二人で遊びに行けることになったんだぁ」
自分でも気持ちが悪いと思ってしまうくらい、顔の筋肉が緩みっぱなしのアスカ。
キョウはそんなアスカに共感しつつ、
『いいなあ。私なんか、全然出会いないし。
そういうワクワク感分けてほしいくらいだよ。
もう、ヒロトさんとアスカは彼氏彼女みたいだね』
と、うらやましげに言った。
「そんなことないよ。
でも、そうなれたらいいなぁ。
やっぱり、子供に見られないためには、女っぽい服で会った方がいいかな?
ただでさえ、ヒロトさんは5個も年上だし……」
アスカは、当日着て行く服に悩んだ。
昨夜焼肉屋に行った時は、バイト帰りなのもあって学校の制服で行くしかなかったし、コンビニバイトでも、店特有のシンプルなシャツを羽織ってヒロトと話している。
「私、このままじゃほんとに妹止まりで終わるかも」
一人で考え、落ち込むアスカ。
キョウは穏やかな口調で、
『そういうの、あんまり無理することないよ。
アスカはアスカなんだから、どんな服着てたっていいじゃん。
ヒロトさんは、そういうアスカを気に入ってるんだよ、きっと』