こわれもの
キョウの言葉が、弱気なアスカの胸にしみた。
“そうだよね。
私は私だ。
歳の差とか関係ないよね!”
「わかった。キョウの言う通りだよね。
自分らしくいってみる!」
『うん! その調子だよ。
うまくいったら、報告してね』
恋の話に興味津々なキョウである。
キョウの前向きな言葉に気が楽になったアスカは、改めて彼女にお礼を言い、電話を切った。
元カレと別れてつらかった時も、キョウは親身にアスカの話を聞いてくれた。
「キョウにも、いつか好きな人と幸せになる日が来たらいいな」
独り言をつぶやくと同時に、アスカはクローゼットを全開にし、手持ちのワードローブを部屋中に広げていった。
シンプルなシャツ。
シックなカットソー。
甘系スカート。
ベッドやソファー、カーペット敷きのフローリングにまでそれらを広げ、面接官のごとく厳しい目で選定していく。
オシャレにはそれなりに興味があるし気を使っているものの、元カレと別れてしばらく経っている。
最近、男性の目を気にした服を買っていなかったことに気付いた。
手に取った服は、どれも無難なものばかり。
クラスの女子と遊びに行く時は、皆の雰囲気に合わせて服を選んでいる。
そうやって揃えた服がデート向きなのかどうか、微妙なところだ。