こわれもの


長いようで短かった日曜日までの数日間。

緊張と期待、ささやかな不安と共に、ヒロトと出かける時間がやってきた。


あれから結局、家にあった服に満足できなかったアスカは、キョウと一緒に大型ショッピングモールに行き、新しい服を買ったのだった。

バイトの初給料が入ったばかりだったので、前から欲しかったブーツも新調した。


2月に入ったばかりで肌寒いので、リップも毎日欠かさずつけていた。

“カサカサの唇してたら、ヒロトさんにもっと子供っぽく見られるしね”


少しでも、ヒロトの目に可愛く映りたい。

休み時間になると雑誌を広げ、近頃サボリがちになっていたメイクも研究した。

「そんなことして関係変わるくらいなら、誰も苦労しねーよ」というマツリの言葉は無視して。


“こういうの、なんかイイな”

ヒロトに想いを寄せるアスカは、自分の起こす言動一つ一つがたまらなく楽しいと感じた。

ヒロトの気持ちが分からないのはもどかしくもあるけど、片想いでもいい。

好きな人ができた瞬間、何でもない日常が鮮やかに彩られた。

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