こわれもの


約束の12時。

晴れた冬の空。

雨も降りそうにない。

アスカの恋を応援するかのように、太陽にあたためられた冬の風が彼女の頬をなでる。


待ち合わせはアスカの自宅近くのコンビニ。

待ち合わせ時間の30分前に到着したアスカは、早くも緊張で渇いたノドを潤すべく、コンビニで緑茶を購入。

ヒロトが来るまで、もうしばらく待たなくてはならないと思った矢先、彼の車はコンビニの駐車場に滑り込んだ。

駐車場で待つつもりなのか、ヒロトは車から降りようとしない。

店内にいるアスカにも気付かないようなので、アスカは自ら、彼のいる運転席の窓をノックすることで、到着をアピールした。

先にアスカが来ているとは思っていなかったらしく、ヒロトは驚き、運転席の窓を開けた。

「待たせたな、ごめん」

謝ると、中から助手席の扉を開ける。

そういうささいな親切さに、アスカはますます、ヒロトが年上の異性なのだと感じた。

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