こわれもの
緑茶を返しハンドル操作に集中し始めたヒロトは、最初の信号で止まると助手席に目を向け、
「今日、可愛いじゃん。
いつも、そんな感じなの?」
と、アスカの服装を褒めた。
「うん、こんな感じだよ」
意味はないが、アスカはウソをついてしまった。
何となく、ヒロトのために全身新品コーディネートにしてきたとは、言いづらい。
「可愛過ぎるから、他の男には見せたくないかも」
そう言い、小悪魔っぽく微笑するヒロトに、アスカの全身はすさまじい早さでほてった。
“なんか、ヒロトさんって、意外に独占欲強い人?”
嬉しいけれど、今までの彼のイメージと違い過ぎて、戸惑いもあった。
そんなアスカの心中を察したのか、ヒロトは意地悪な笑みで、
「なんてね。冗談。
本気にするなって。
俺はそんな小さい男じゃねーよ」
「だよねー、ビックリしたよ」
調子を合わせつつも、ヒロトに距離を置かれたように感じ、アスカはひどくガッカリした。