大切なもの
また、綾香の事を――。
一人で自嘲じみた笑みを浮かべると、これから日本に帰ってから綾香に嫌でも会う事を思うと落胆した。
俺は――アイツに会ってから4ヶ月前とは違った、兄貴を演じる事が出来るだろうか。
他の奴の隣で笑ってるアイツを見て普通に接す事が出来るだろうか。
その考えを振り払うようにして部屋にいる皐月の方へ足を進めた。
部屋に入るなり、皐月を後ろから自分の方へ引き寄せて抱き締めた。
「…わ、何。どうかした?」
「………」
「アメリカ立つの寂しいの?」
「……あぁ」
「日本帰っても二時間ぐらいで会える距離だよ」
「…おぅ」
――俺には、皐月がいる。