大切なもの
 


「あっ、あたし!空也の義理の妹の綾香って言います!」


綾香も慌てたように皐月に挨拶をすると少し頭を下げた。


「皐月です、よろしくお願いします、綾香ちゃん!」

「お母さん達から聞いてました!空也からは聞いてなかったけどぉ」


そう言って綾香は俺を睨むように見てきた。


「なんだよ?」

「空也、あたしには連絡一切寄越さなかったんですよー。酷くないですか?」


…連絡なんか出来るか。
きっとあの時の俺は綾香の声を聞いただけで帰りたくなっちまう。

綾香の言葉に笑っていた皐月に声を掛ける。


「…皐月、お前の家族にも挨拶行こう」


皐月の肩を掴みながらそう言う。


綾香はもう俺に対して何も感じないんだろう。また綾香を見れば満面の笑みで微笑んでた。
――お前はもう、俺から離れてしまったんだな


「…空也?早く行きなよ」


綾香のその言葉にハッとすると、疑問に思ってた事を口にする。


「あ、あぁ。そういやお前正人は?」

「今日はバイトで来れないんだって言ってた」

「…そうか」

「うん?」


綾香は不思議そうな顔をしたけど、俺は皐月の家族に挨拶する為にそこを離れた。




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