大切なもの
皐月の両親も本当に気の良い人で、初対面なのに「きっと子供は美人さんね!」とか冗談を言ってた。
その後俺は皐月と暫くの間の別れを告げてから綾香達と久しぶり過ぎる我が家へ帰った。
車の中でも綾香はいつもの笑顔を絶やさなかった。俺とも普通にじゃれあって、その光景は本当の兄弟みたいだった。
俺だけが意識してるだけか――となんだか複雑な気持ちになったけど。
「おーおー、変わんねぇのな」
そう言ってから4ヶ月ぶりの我が家を見渡すと綾香が「そうかなぁ?庭とか見た?」と言いながら首をかしげる。
「空也、荷物多い!…あ、今日は空也疲れてるだろうからってお祝いは明日になったってママが言ってたよ」
「…何の祝いだよ?」
「…帰国祝い?留学お疲れさん会?」
「祝う程でもねぇだろうに」
「いや、祝うでしょ!そこは飲むでしょ!」
そこまで言ってから綾香はいきなり嬉しそうな顔をしてから
「そういえばね、空也がいない間あたしお酒飲めるようになったんだぁ」
「…そっか、じゃあ明日一緒にな」
「うん!」
そう元気な返事をして笑顔を見せる綾香をやっぱり愛おしく思ってしまった俺はこのやるせない気持ちをどうすれば良いのだろうか。
【完】