大切なもの
恥ずかしそうに、遠慮がちに俺と親父の前に立った綾香。今のデカイ態度とは大違いだった。
「空也ぁ!おかえりぃ」
今も昔も、綾香は俺の事をお兄ちゃんなんて呼んだ事は一度もない。
「…って、お前酔ってんのか!?」
「はぁ~~?どこが」
「目が虚ろだぞ、馬鹿か?何飲んだ?」
「うつろぉ?ばか?ビール2本飲んだだけじゃん」
「臭ぇ、あっち行け」
「ひっどぉ!!分かった、バカ空也!」
…本当にどっか行きやがった。
綾香の行った方に目をやると、カウンターの方でお喋りをしながらお酒を飲んでる母さんや叔母さん達。きっとあの人達が飲ませたんだろう。
綾香を見ると、まだビールに口を付けてた。