大切なもの
 


後ろから明らかに不機嫌な声色で、


「…空也、やっぱ良い。吐き気治まっちゃったからあたし寝てる」


綾香はそう言ってから俺がいる方向とは逆の方向に寝返りを打った。

そんな綾香に俺は近付く。


「いきなり何だよ、可愛い妹さんよ」


意地悪い声でそう言うと、綾香の肩が微かに揺れた。


「…か、可愛い妹はもう寝るから出てって」

「……寝るまで居とく」


それだけ言うと、ベッドの下に座った。


綾香は反対側を向いたままでこっちを向こうとはしない。




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