大切なもの
――あたしの心はいつだって黒くモヤモヤしてる。
汚い心を隠すように、料理を空也の前にパッと並べてから洗面所へ行ってから心を落ち着かせた。
「うまそー、いただきます」
そう言ってから空也はご飯を食べ始める。
「ねぇ、空也」
「…何?」
「…ご飯食べたらすぐ帰れる?あたし大学の先輩と約束してるんだ」
そう言うと、ご飯を食べる手を止めて空也がこっちを見た。
「…急いでんのか?」
「うーん、出来ればもうすぐ出たい」
――嘘、本当はもっと一緒に居たいよ。だけどもうこれ以上一緒に居たら涙堪えきれる自信がないんだ。
すると、空也が盛大な溜め息を吐いて
「…ったく、はぁ。俺空けとけっつたよな」
「うん、好きな先輩だから断れなかったの」
――嘘を付く。
空也以外に好きな人なんかいないよ。