大切なもの
 


嘘を付いたあたしの言葉に、空也が一瞬だけ目を見開いたような――気がした。


「…そっか、じゃあ行ってこいよ。待ってるから」


「…はぁ!?」


「言ったろ、話があるって」

「…き、」


――聞きたくないから、帰って欲しいのに。


「なるべく早めにな、俺寝とくから」


それだけ言うと、空也はさっさとあたしのベッドに移動して寝転がった。


あたしに拒否権はないらしくて。渋々家を出てから少し早いけど待ち合わせ場所に向かった。


「…綾香ちゃん!」


待ち合わせの時間より結構早い時間だっていうのにも関わらず、その先輩はすでにそこに居た。


「早いですね」


そう言って嘘くさく笑うけど、その先輩は満面の笑みで返してくれた。




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