大切なもの
いつの間にか涙は引いてて。空也の顔を見ると、こっちをジッと見つめてた。
その瞳を見ると、なんだか悪いことをした気分になった。
すると、首に唇を押し付けられた事を思い出して、あたしは急いで洗面所に向かった。
鏡を見ると、案の定赤い痕がついてて、鏡に写ってる自分がどうしようもなく気持ち悪くて、その痕を消すように強く擦った。
こんな痕を付けたまま、空也に会いたくなんてなかったのに。
空也にあんな所、見られたくなかったのに。
「…空也…」
洗面所から戻ると、空也はソファーで仰向けになって腕で自分の顔を覆って倒れてた。