大切なもの
あたしの呼び掛ける声に空也が腕を顔からずらして、あたしと目を合わせる。
「…何やってんだよ」
――冷たい声色。
それはあたしの頭を冷やすのには十分だった。
「無防備なのが悪ぃんだろ」
「………」
「お前、俺居なかったらどうしてた?」
「………」
「あいつ、半分理性失ってたろ」
「…ごめん、ありがと…」
そう言うけど、空也は冷たい眼差しをあたしに向ける。
「馬鹿じゃねぇの」
「…っ、そんな言い方…!」
「本当に好きなのかよ」
「…空也に関係ない!!」
気付いたときには、切羽詰まった声を出して目からは涙が流れ出してた。