大切なもの
――切羽詰まった声で「好きだ」とキスしてくれたのもあれが、本当に、最後――。
「――俺、皐月と」
――あたしはその言葉を聞く前に空也の口を塞いだ。
空也の胸ぐらを掴んで自分から唇を重ねたあたしに、空也はこれでもかってくらいに目を見開いた。
「…知ってるよ。聞きたくない」
そう言うと、空也は諦めたようにして「あれで最後だったハズなのにな」って言って笑った。
――そして、離れかけた唇をまた引き寄せたのは、空也だった。
後頭部に回された手に安心する。触れる唇に好きって感情が溢れてくる。