大切なもの
 


――切羽詰まった声で「好きだ」とキスしてくれたのもあれが、本当に、最後――。




「――俺、皐月と」




――あたしはその言葉を聞く前に空也の口を塞いだ。

空也の胸ぐらを掴んで自分から唇を重ねたあたしに、空也はこれでもかってくらいに目を見開いた。


「…知ってるよ。聞きたくない」


そう言うと、空也は諦めたようにして「あれで最後だったハズなのにな」って言って笑った。



――そして、離れかけた唇をまた引き寄せたのは、空也だった。


後頭部に回された手に安心する。触れる唇に好きって感情が溢れてくる。




< 36 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop