大切なもの
 


「……愛してる」

「………っ、ふ」

「今も昔も、お前だけ」


お前、って誰――?なんていうのは、聞くまでもなかった。空也の熱い眼差しがこっちに向けられたから。


「………」

「なんで兄妹なんかになったんだろうな」


「でもそうしなきゃ出会ってなかった」そう呟いて空也は自嘲的な笑みを浮かべた。――あたしの涙はやっぱり止まってはくれない。


「…ふ、う、ぅー……」

「…幸せになれよ、綾香」

「…やだぁ、っ…空也!」


体が離される瞬間に、首筋に落とされたキス。――それがあたしたちの、本当の最後だった。


――あたしに忘れる事の出来ない甘さだけを残して、君は近付けない程遠くへ行ってしまった。



【完】



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