大切なもの
そう言えば、なんであんな夢を見たんだろう。
綾香が結婚だなんて、まだ高校も卒業してねぇのに。
――ふと、考えた。
綾香がもし大人になって結婚する時が来たら――と。
俺はその時に笑顔でアイツを祝福してやれるだろうか。
綺麗なドレスを着てから、男の隣で笑う綾香を見て、俺はもしかしたら連れ去りたいとか思ってしまうかもしれない――
――って、俺。また綾香の事考えてやがる。
考えを振り払うようにしてベッドを出た。
留学してから毎日綾香の事を考えなかった日はない。
これじゃ、離れた意味がないのに。
留学中に綾香を見て、声を聞く事が出来るのはいつも夢の中だけだった。
【完】