大切なもの
再会
「空也がこれ持って!」
「おぅ」
そう言ってから朝から慌ただしい皐月に指示されるがままに荷物を持つ。
「えーっと、これはアレでアレはもう送ったから――」
とうとうアメリカを立つ日が来てしまった。
2ヶ月間、皐月と過ごしたこの部屋ともお別れだ。
「あー、そうだ!あの靴も持っていかなきゃ」
「…皐月、落ち着けよ。結構まだ時間あんだろ?」
「あぁ、うん。落ち着きたいんだけど。落ち着かないの。忘れ物しそうで怖い」
「きちんと一つ一つ後で確認すりゃ良い」
「…まぁ、うん。そうだね。ゆっくりね」
そう言うと皐月は気を取り直したように少し深呼吸をしてからまた部屋の中へ入っていってしまった。
そそっかしい所まで――綾香に似てる。