翡翠幻想
言って立ち上がった男に、桂桂はほとんど飛び跳ねんばかりにしながら、布袋を取り出した。
その頬は、喜びに上気している。
「すごいや、大哥!あの、これ、返します。ありがとうございましたっ」
しかし、差し出された翡翠を、何故か男は受け取らなかった。
しばらく思案するような顔で姉弟と翡翠とを見比べる。
「……よい、それはそなたに差し上げよう」
「大事なものではないのですか?」
布団の上で身を起こした珠明が問うた。今度はふらつく様子もない。
「無ければ無いで良いのだ、そのうち慣れよう。それに……」
男の目を向けられて、珠明は何故かぱっと顔を赤らめた。
自分でも、どうしてそんな気持ちになったのか分からない。
胸の奥がどきどきと騒がしい。
なおも此方を見つめている男に、何もかも見透かされているようで、恥ずかしかった。
「とにかく、返す必要はない」