翡翠幻想
「その後、珠明は元気だろうか」
前回と同じように唐突に現れた青に、桂桂は釣瓶を取り落として、辺りに水をぶちまけてしまった。
「驚かせたか、すまない」
律儀に謝る男に、桂桂はぎゅっと口を結んで首を横に振った。
「どうした?」
「大哥、姐姐が……」
優しげな口調に、彼は堪えきれなくなって郷に役人が来たこと、県令の命令、姉が連れ去られたことなどを一息に話す。
青のせいではないとわかっていながら、もっと早く会いに来てくれれば良かったと、恨み言を投げつけた。
「今の県令さまは、いやなやつなんだ。たくさん税金をとって、自分ばっかり良い思いをしてるんだよ。でも、誰もなんにも言えないんだ」
そんなところに珠明がいるなんて、耐えられない。
桂桂はしゃくりあげながら訴えた。
「許せぬ」
その声は、姉弟に親切にしてくれた男の声とは思われなかった。