翡翠幻想
「姐姐!」
「桂桂?!」
桂桂は、牀の上に飛び乗ると、姉に抱きついた。
記憶の中よりも、細くなったその体がかなしい。
「あなた、どうして……」
「ぼくにも、よくわからないんだ。井戸で水汲みをしていたら、青大哥が……」
「あの方が?」
二人は揃って前方に視線をやった。
以前、風は渦巻いている。
渦の中でちらちらと閃くものがあり、目を凝らしてみると、それは鱗を持った長い体がうねっているのだと分かった。
その鱗の色は、翡翠。
やがて、風が収まると、其処には一人の美丈夫が立っていた。
言うまでもなく、青である。
県令は目の前で起きた異事を受け止めそこなったような顔をして、床に座り込んでいた。
戸口には矛を持った衛兵が詰め掛けていたが、誰一人として部屋に入ろうとしない。
否、入れないのかもしれなかった。
かつて、桂桂が井戸の側で金縛りにあったのと同じように。