翡翠幻想
「大丈夫よ」
そういって笑う少女は、しかし顔色が良いとは言えなかった。
二人のこどもを、厄介なお荷物くらいにしか考えていない叔父夫婦は、珠明を医者に診せようともしない。
大方、仮病を使って怠けようという魂胆なのだろうと、罵声を飛ばしてくるくらいなのだ。
姉弟は、互いに労わりあって過ごしていくほかなかった。
「そうだ、姐姐。良いもの見せてあげるよ」
桂桂は片手に握りこんでいたものを、姉に渡した。
「なぁに」
「井戸で水を汲んでいたら、桶の中に入ってたんだよ」
「まぁ……」
珠明は自分の掌の上で光るその小さなものに、ほっと息をついた。
「きれいね。水汲みに来た誰かが耳環でも落としたのかしら……」
それは、小さな半球状の石のようだった。
表面はつるりとしており、煌びやかな装飾品から剥がれ落ちたのではないかと思わせる。