翡翠幻想

「礼など良いのだ。だが、我が妻になってくれような?珠明よ」

 顔を上げた珠明は、口ごもった。

 まっすぐに見つめてくる男の目は誠実で、県令とは比べ物にならない。

 力強いが暴戻ではなく、思わず膝をつきたくなるような威厳が備わっている。

 先刻、青海湖竜王と言っていた。

 正しくこの人は王なのだ、と珠明は思った。

 無意識のうちに傍らを探り、桂桂の手を握った。

 弟は、口出しをせずに姉を見守っている。

 意を決し、珠明は口を開いた。

「青さま、わたくしは……」
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