翡翠幻想
 唯一、その首飾りの玉だけは、糸が切れて直すどさくさに紛れて、珠明が手に入れたのだった。

「落とさないようにね。二舅に気づかれては駄目よ」

「うん」


 その日、桂桂は仕事の合間合間に、布袋をこっそりと覗いた。

 そのちらちらとした輝きを見ていると、疲れや嫌なことを皆忘れられるような気がした。

「桂桂!怠けてるんじゃないよ!」

 一度、叔母に怒鳴られたが、ぱっと隠した布袋に気がつかれることは無かった。

 働く間にも、頭の中できれいな緑色がまたたいている。

(これを売ったら、姐姐のお薬が買えるんじゃないかしら……)

 桂桂はそう思った。
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