翡翠幻想
来客
妙な男が姉弟を尋ねてきたのは、その数日後のことだった。
桂桂が水汲みから帰ってきたばかりのことだ。
「ごめんください」
「はい」
こんな早朝に客人とは珍しいと思いながら、珠明が戸口に出た。
盗人の類であれば恐ろしいと思ったが、聞こえてきた声は人品の良い響きをしている。
「どちらさまでございましょうか」
そっと戸をあけると、黒い長袍を着た見知らぬ男が立っていた。
長袍と一口に言っても、姉弟が着ているものの何十倍も上等な服地で作られたそれである。
男は皺のない顔をしていたが、不思議と若いという気がしない。
なんだか得体が知れない、と炉の傍で桂桂は思った。
「翡翠をお持ちではありますまいか」
名乗ることもせずに、男は言った。
「は……あの、ひすい、ですか」
桂桂が水汲みから帰ってきたばかりのことだ。
「ごめんください」
「はい」
こんな早朝に客人とは珍しいと思いながら、珠明が戸口に出た。
盗人の類であれば恐ろしいと思ったが、聞こえてきた声は人品の良い響きをしている。
「どちらさまでございましょうか」
そっと戸をあけると、黒い長袍を着た見知らぬ男が立っていた。
長袍と一口に言っても、姉弟が着ているものの何十倍も上等な服地で作られたそれである。
男は皺のない顔をしていたが、不思議と若いという気がしない。
なんだか得体が知れない、と炉の傍で桂桂は思った。
「翡翠をお持ちではありますまいか」
名乗ることもせずに、男は言った。
「は……あの、ひすい、ですか」