甘く、響く。【密フェチSS】

あたしは顔が真っ赤になったと思う。
なんか悔しい。
先生はなんでもお見通しなんだもん。
あたしが授業を聞いているようで、内容を全く理解していないことも。
ただ先生の声だけを聞いてることも。

音が好きなはずなのに、先生の低い声が聞こえたら、他の音なんて耳に入らないの。

「好き。大好き」
「俺の声だけが好きなの?」

頭がじんじんして、考えが追い付かない。
でも、何を言われたのか必死に考えて、あたしは首を横に勢いよく振った。

先生の声はあたしの好みど真ん中。
聞くだけで体の芯が熱くなる。
でも……。


「声だけで、結婚なんてしない」


声に翻弄される自分が嫌で、先生の口を塞ごうとした。
だけど、先生のメガネに顔が当たってしまう。
「わっ」

先生は笑いながら、メガネを外した。その姿を、少し痛む鼻筋を押さえながら盗み見る。
キス一つ満足にできないあたしが先生のお嫁さんでいいんだろうか。

先生はあたしの両手首を掴んで横によけると、顔を覗きこんだ。
「俺の名前呼んで」
「……たける……さん」


「俺も、ひかりを愛してる」


それは極上の響き。






END.
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