友の姿、午後6時【短編】
自信満々に"知らない"と云い切れる宮野に、最早呆れよりも感心してしまう。
此処までバカになれたら人生楽しいだろうなあ、と思った俺も若干バカなのか。
バカと喋るとバカが伝染るって云うのは、都市伝説じゃなくて本当の事なのかもしれない。
『でも、なんつーかな……こう、きゅんって…一目惚れしちゃったんだ』
「一目惚れ、ねえ……」
さっきのとは違って、低くて何処か切なげな声音が耳に届く。
電話越しだから表情は見えないけど、宮野が今どんな顔してるかは想像がついた。
多分、真剣な面持ちをしてるんだろう。
9年近く友達として傍に居る俺でも、殆ど目にした事のないような顔を。