友の姿、午後6時【短編】
一発殴らせろ、それで許す
汗を拭い終わり、気を取り直して俺は口を開く。
「……で、なに?」
『だからさ俺、恋したんだ』
「はあ?恋愛に微塵も興味のねえお前が?」
『うん、そーなのよ。今まで全く興味なかったんだけどさあ、あの人には一瞬でヤられたね。心を奪われちったよ………所謂、ハート泥棒がいたんだ。恋愛警察に俺の恋の相談乗って貰わねえともう何も集中できない。あれ、今すごい上手い例え発言してね?宮野くん天才?』
「殴っていいか」
『ごめんなさい』
終始ふざけた事云いやがって、目の前に居たら謝罪されても一発殴ってるところだわ。
しかし、宮野の口からまさか"恋"という言葉が飛び出す日がこんなに早く来るとは思わなかった。
今年で一番驚いた言葉かもしれない………。
いや、やっぱり一番驚いたのはさっきの開口一番に告がれた主語無しの好き発言だな。
だから二番目に驚いた、に訂正しよう。